第2回質問状(2014年7月26日)

平成26年7月26日

京都市立養徳小学校プール事故
第三者調査委員会

委員各位


再質問状 調査報告書に対して


浅田 羽菜 両親

 

委員のみなさまには、一年間にわたる長期間、私たちの娘、羽菜のプール事故にかかわる調査に対し、多大な労力と時間を費やしていただいたこと、私たちの度重なる要望を受け、さまざまなご配慮とご斟酌をいただいたことに再度御礼を申し上げます。

また、再現検証や、多岐にわたる関係機関、関係者への聴き取りの実施によって多大な情報を収集し、それを精査、分析した上で、プール事故の再発防止に向けて、具体的・実際的な提言を行うことにも多大なご尽力をいただきました。その上で、事故の直接的な原因についてそのリスクを詳細にご検討いただいたこと、救護措置にかかわる問題について、率直な認定を行っていただいたことにも、深く感謝をいたしております。

報告会でも、その後の私たちの記者会見でも申し述べましたが、私たちは結果として示された内容に不服を訴えているわけではありません。その点についてはご理解いただければと思います。

 

平成26年7月25日、貴調査委員会より、平成26年7月24日に私たちが提出した質問状に対しては、回答する必要はないとの趣旨の「ご連絡」をいただきました。

 その理由として、平成24年7月18日には両親に報告書を渡し、平成24年7月20日に両親及び京都市教育委員会に対して報告書に基づく説明をするとともに、質問や意見に対して回答したこと、規則に基づく公表のために行った平成26年7月24日の記者会見に両親が出席し、貴委員会の説明と、記者との質疑応答を聞いたことを挙げ、それによって、規則に基づく報告を終えていると述べておられます。

 

 先般の質問状は報告会後に作成したものですので、当然、報告会ではご回答をいただいておらず、その中で、公表時の記者会見でご回答いただけていない部分について、また、その機会に貴委員会が言及された根拠に対して生じた疑問について、再度お尋ねしたいと考えます。本日中、貴調査委員会調査期間内に、なんらかのご回答をいただきますようお願いいたします。

 

1.両親への経過報告の日時について

両親に行われたとされる、「調査の経過」(「調査の内容」ではなく)の報告日時詳細についてはご回答をいただいておりません。それについてのご説明をお願いいたします。

 

2.調査報告書の内容にかかわる疑問について

何度も申し上げますが、私たち両親は、貴委員会が出された羽菜の溺水状況に対する認定自体に不満を持っているわけではありません。結果的にこのような事態があり得ることについては了解しつつ、貴調査委員会がその認定をされた根拠が、報告書では明確にされていないと考えており、その点についてのご説明をお願いしております。

 

以下、この度の質問状では、先の質問状にかかわり、記者会見において言及された根拠と資料との矛盾がある点について事項を絞ってご質問いたします。

 

(1)A教諭の証言の変遷と、その選択根拠について

記者会見で、貴委員会が「一貫している」と繰り返し主張したA教諭の証言は、実際には、報告書P.40の「2~3回往復したところ」との記述に対し、平成24年8月17日の両親説明会(平成25年7月27日文字起こし資料提出済み、音声データあり)では「往復か…そのうち1回か2回か、行って」、同日の説明会資料として養徳小校長名で出された「現時点で学校で把握している事実関係について」と題された文書(平成25年7月27日資料提出済み)では、「追いかけたり追いかけられたりを3~4回繰り返している中で」(P.7 )と変遷している。

 

その中で、報告書内では「2回往復」(再現検証で計測)の証言が選択された根拠について。

貴委員会より平成24年7月25日に発表された「自由遊泳から119番通報まで」と題された資料によれば、水遊び開始から通報(確定的)までの合計時間(再現結果)は、最短合計で146秒、最長合計で189秒である。もし貴委員会が示すとおりの時間に基づいたとしても、水遊び開始が13時48分14秒ならば18秒~1分11秒、13時49分07秒ならば最長28秒、通報時間までには時間の余裕が残り、鬼ごっこ施行の可能時間は延長される。したがって、鬼ごっこは2回往復以上、3往復することも可能と考えらえる。しかもこの時間経過の推測は、水泳開始時間、自由遊泳開始時間が確定的であるとしたときのみに成り立つものである。

この点の、2往復でなければならなかった他の根拠について。 _

その軸が変われば、A教諭の移動時間の約47秒~58秒(P45, P55)、羽菜の移動時間の約29秒~31秒(P47,P55)、発見までの時間の16秒~27秒でという推測も変わる。

 

(2)A教諭の鬼ごっこ証言について

委員長は、会見の中で、「市教委は鬼ごっこについてそれほど訊いていなかった」と言及し、「詳しい供述はなかったのでは」という推測を示したが、実際には鬼ごっこについては市教委の聴き取り資料もあり、本人の供述資料も存在している。

この資料を根拠としなかった理由について。

 

(3)育成学級女児(民事訴訟における推認の基礎となった証言をした女児:以下女児P)の証言について

女児Pの証言(教頭説明):「後ろから、お名前はわからない、3年生の男の子がビート板に飛び乗ろうと、ポーンとこうしたときに、後ろからビート板が当たった。で、そのときに手を離したので、羽菜さんがどこにいかれたのかわからなかった。で、捜していたけれども見当たらなくて、で、水の中を見てみたら、潜ってみたら水の中にいはるのを見たと。で、名前の知らない3 年の先生に言った。で、上にあげはった。」(平成24年8圧20日両親への説明記録平成25年7月27日提出済み)

 

女児Pの証言(聴き取りメモ):「ふかいところ足つかへんかも。つかへんところは助けてあげような。うしろから人が来て、ちょっと横にずれた。男の子、名前しらない、3年がビート板に乗ろうとした。水の中に手つないでた。急いで、小走りで来て、手つないだ、はなれた。どこかな、まわりみたらいないから、もぐってみたら半分下にいはった。A先生に言った。上にあげはった。」(平成24年7月31日)

「ビート板あたった。手を放し離れた。しらない先生に」(平成24年8月1日)

会見では、この女児Pの証言を採用しなかった最大の理由として、女児Pの証言が変遷したことが挙げられた。同時に、「(大型フロートの下に」沈んでいた」という前提を明示し、そうであるとしたら、自力では浮かびあがれず、大量の水を飲んでいるはず」ということが何度も反証として説明された。

 

しかし、ここには大きな矛盾がる。この「沈んでいた」という証言は誰の証言であるのか。女児Pの証言だとすれば、「かなりの変遷」が生じていると委員会が判断し、除去したはずの、その証言に依拠して「沈んでいた」ことが検討されていることになる。

実際に、女児Pの当初の聴き取りメモに、「沈んでいた」という言葉はないからである。「半分下にいはった」という言葉はメモされており、これは「沈んでいた」という状態と見るよりも、「フロートに半分隠れていた」あるいは「体の半分は水の中にいた」状態とみることができるのではないか。

この点について、女児Pの証言がどのように検討されたのか。この証言を排除する、「沈んでいた」こと以外の根拠について。

 

3.P.314に示された両親の要望についての見解

貴委員会は、報告書において、「平成26 年5 月25 日実施した浅田さん夫妻からの最後の意見聴取のあと,浅田さん夫妻から,報告書提出以前に,浅田さん夫妻及び教育委員会の両当事者に対し,報告書案の基本的事実関係について開示すること,調査の経緯と報告書案の概要について説明をすること,及び,開示・説明した報告書案について両当事者からの意見聴取をすることを求める要望があった。本委員会は,浅田さん夫妻から聴取及び提出していただいた内容のうち報告書案にまとめる内容に関しては,事実関係の確認依頼を浅田さん夫妻に対し行ったが,それ以外の報告書案の内容(関係者・関係機関等からの聴取内容及びその他当委員会の調査により収集した内容)に関しては,整理,評価,認定は,当委員会の職責においてするものであり,報告書案の事前開示,説明,意見聴取は,本委員会の独立性,中立性,公正性を損ねる重大な問題であり,できないと回答した。」と記載されているが、両親が「報告書案の基本的事実関係について開示すること,調査の経緯と報告書案の概要について説明をすること,及び,開示・説明した報告書案について両当事者からの意見聴取をすることを求める要望」をした理由については触れず、貴委員会の立場として「(関係者・関係機関等からの聴取内容及びその他当委員会の調査により収集した内容)に関しては,整理,評価,認定は,当委員会の職責においてするものであり,報告書案の事前開示,説明,意見聴取は,本委員会の独立性,中立性,公正性を損ねる重大な問題であり,できないと回答した。」と記述している。

 

この点に関し、記者会見では、安保委員長から、「記者の皆さんも、取材された方から、この事件を書くのなら、自分が被害にあった事件だから、取材メモを見せてほしい、他の人から取材した内容も見せてほしいと言われたら、到底承知できないだろう」との発言があった。

私たち両親が、事実確認の正確性と、報告書の信頼性、妥当性を担保することを求めて、調査委員会に対し繰り返し説明を要望してきたこと、私たちだけでなく、一方当事者である京都市教育委員会にも同様の機会が与えられるべきであると要望してきたこと、それが上記の発言にある、報道機関に取材メモを見せてくれという行為と同一視されるべきものであるのかどうか。委員長はあの要望を、そのようなものと理解していたということであるのか。この2点については、明確に、早急に説明をしていただきたい。

 

また、両親にはその場での発言を留めておいて、委員会の主張のみに記者会見の場で言及すること、また公開されるべき報告書においても同様に、両親の意図を示さず、委員会の主張のみを明記されていることは、独立性、中立性、公正性を標榜される第三者調査委員会が本意としてなされたことではないと思われるので、この点にかかわり、両親より提出した一連の要望書と、それに対する委員会よりの回答についても、報道機関に公開させていただくこととしたい。

 

 

この度は以上の4点について、そして平成24年7月24日に提出した質問状の内容についても、再度ご回答をいただけますようにお願いいたします。

貴調査委員会の期日としては、まだ一日を残しております。最後まで、両親と京都市教育委員会により選任された、第三者調査委員会委員としての職責を果たしていただくことを、ここにあらためてお願いいたします。

 

以上