■第1回質問状(2014年7月24日)

京都市立養徳小学校プール事故

第三者調査委員会 委員各位


質問状 調査報告書に対して


浅田 羽菜 両親

 

 平成26年7月20日、貴調査委員会より、「京都市養徳小学校プール事故調査報告書」をご提出いただきました。

 私たちが、突然に奪われてしまった娘、羽菜のためにと、事故直後から願い続けたこの調査の要請に応じ、一年間にわたる長期間、多大な労力と時間を費やしていただいたことには、深く感謝をいたします。また、私たちの度重なる要望を受け、さまざまなご配慮とご斟酌をいただきましたことについても、個々の委員のみなさまにお礼を申し上げます。

 

 最終報告書を拝読させていただき、学校におけるプール事故という事態に対し、多様な側面からの検討を加えていただいたことをあらためて感じております。特に、再現検証の実施や、多岐にわたる関係機関、関係者への聴き取りの実施によって多大な情報を収集し、それを精査すること、プール事故の再発防止に向けて、具体的実際的な提言を行うことについては、私たちの要望に沿って多大なご尽力をいただきました。

 特に、事故の直接的な原因について、そのリスクを詳細にご検討いただいたこと、救護措置にかかわる問題について、率直な認定を行っていただいたことには、深く感謝いたします。

 

 その上で、以下に申し述べる点については、さらにお尋ねしたいと考えますので、まだ数日を残す貴調査委員会の調査期間内に、口頭によるご説明の機会を設けていただき、ご回答をいただきますよう切にお願いいたします。

 すでに完遂された調査報告についてご回答いただくことには、独立性、中立性、公正性といった点でのご配慮の必要はないと存じますので、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

1. 調査報告書の構成上の問題について

2. 調査報告書の内容にかかわる疑問について

 

 

1. 調査報告書の構成上の問題について

1)「証言」の選択・整理・分析・提示に関する問題

・報告書の中で最低限提示すべき情報について

私たちは、「証言」として示されるものについては、それらが、どのような属性を持つ者の、どのような条件下での証言なのかについては、最低限の説明が必要であろうと考えます。当然に、個人情報に抵触しないこと、独立性、中立性、公正性を損なわないことは前提となりますが、それについてのご見解をお答えください。

 

証言聴取の状況の詳細について

どのような状況で聴き取りを行ったのか

(何月何日、誰に対して、何を目的とした聴き取りにおける証言なのか)

どのような属性を持つ者の発言なのか

聴取した月日、機会(○回目の聴き取り等)の明示

 

・上記の証言にかかわる情報をどのように委員会が認定したのかという基準について

現在の報告書では、委員会が認定した「事実」として提示する「地の文」の中に、「証言」内容が非明示的に混ざり込んでいるという問題があると考えます。

(14p, 25-26p, 37p131p, 175p等)

以下のように、

① 分析資料(データ)としての「聴き取り内容」

② ②分析内容

③ そこから導き出される結論としての(暫定的)「事実」の判断 

という位相を明確に分けて記述していただくことが必要であり、それが、委員会が、どのような証言をどのような理由を持って「事実」として選択され、認定されたのかという判断基準と、そのプロセスを示すものとなるのではないでしょうか。

もとより、「事実」の選択には不可避的に恣意性の問題が伴われます。事実認定にある種の偏向が伴うことは避けられないとしても、選択の経緯を明確にすることで、その偏向の理由自体を自覚的に明らかにしておくことが可能であり、また必要であろうと思われます。

現報告書では、貴調査委員会がどのように「事実」の認定をし、判断をされたかについて、聴き取りの位置づけが曖昧であると私たちには感じられます。すなわち、どのような理由によって、どのような語りを捨象したのかが不明確であり、そこに十分な妥当性が示されているとは思えない部分があります。

本来的には、「1)再現検証による物理的「事実」の探究と仮説形成」が行われ、「2)聴き取りとの整合性」が検証されるべきでしょうし、そこにおいてこそ、多声的な聴き取りによる「事実」の複相的な提示が意味を持ち、またその複層性が、そのプロセスを方向付ける動きが生まれるのではないでしょうか。

 

 

2.調査報告書の内容にかかわる疑問について

貴調査委員会の出された報告書、「第3まとめ(p.98~)」「第4 6. 経緯に関するまとめ(p.102)」によれば、羽菜がA教諭と遊んだのち、溺水状態で発見されるまでの行動は以下のようなものとされています。

「羽菜はA教諭と遊んだ後、A教諭と3年生児童が始めた鬼ごっこの場から早々に離れ、障害物や他児との接触など、いかなる外的要因の影響も受けることなく、一人でプールを横切り、突発的、偶発的な事態(体のバランスを崩す、顔に水がかかる、せき込む、あるいは頭部が水没するなど)によって不意に少量の水を飲みこんだことで一時的な窒息状態に陥り、数秒以内の短時間で意識を喪失した。」

 

私たち両親は、結果的にこのような事態があり得ることについては了解いたしますが、貴調査委員会が上記の内容を認定された根拠には、疑問の余地が残ると考えております。

また、この調査中に判決を得た民事訴訟において示された推認との違いがあることについて、貴調査委員会は、独自の資料収集を可能な限り行い、「民事訴訟とは事実認定の基礎が異なっているため」(P.313)との見解を示されていますが、その事実認定の根拠についても、報告書では具体的に示されておりません。再度、その点についてご説明いただきたいと思います。

 さらには、両親に行われたとされる、「調査の経過」(「調査の内容」ではなく)の報告についても、私たちは行われていないと認識しています。それについてのご説明もお願いいたします。

 

一、P.98の4.「プールのセンターライン付近を、当該ラインに添うような経路で、ほぼ直線的に南から北の方向へ単独で移動を開始した。」という点について
二、P.98~P.99の5.「この移動時、大型フロートなど浮遊物や他の児童との接触、加害行為、その他外的な要因の影響を受けることなく、北側プールサイド付近センターラインやや東寄りの地点に到着した。」という点について

三、P.99の7.「羽菜ちゃんが溺水によって意識を喪失した16秒から28秒後、鬼ごっこで追われる役をしながら東から北の方向に移動していたA教諭によって羽菜ちゃんは発見、救助された。」という点について
四、P.313 民事裁判による推認と異なる結論について

五、P.314 両親に対する「途中経過の報告」はいつ行われたのか、その日時と形式

 

Ⅰ 一~三においての疑問点

上記の一から三の下線部分について、貴調査委員会の作成された報告書の目次に添ってお尋ねいたします。

 

1.「第3章 事故の発生状況」 

「第1 羽菜ちゃんの行動から溺水までの経過」(P.44~)、「3.総括(P.64 )」部分

P64. 「3.総括」の「(1)」

・A教諭の移動時間について

移動時間を検討する軸となっているのは、「鬼ごっこ」の際の移動経路についてのA教諭の証言であり、それを基にした再現検証の計測時間である。検証になんらかの軸が必要ではあるとしても、A教諭の証言には以下の通り曖昧な点があり、軸とするには不適切ではないか。

P.40の「2~3回往復したところ」との記述に対し、平成24年8月17日の両親説明会(平成25年7月27日文字起こし資料提出済み、音声データあり)においてA教諭は「往復か…そのうち1回か2回か、行って」と述べており、同日の説明会資料として養徳小校長名で出された「現時点で学校で把握している事実関係について」と題された文書(平成25年7月27日資料提出済み)内では、「追いかけたり追いかけられたりを3~4回繰り返している中で」(P.7 )と記述されているにもかかわらず、再現検証での実験による計測データは、2回往復の時間しか示されていない。往復が何回であるのかによって所要時間は異なるため、1回~4回の実験データが存在するならば示し、それに基づいた検討も行われるべきではないか。

その軸が変われば、A教諭の移動時間の約47秒~58秒(P45, P55)、羽菜の移動時間の約29秒~31秒(P47,P55)、発見までの時間の16秒~27秒でという推測も変わる。

 

・羽菜の移動時間について

   羽菜の移動時間は約29秒~31秒(P47,P55)、A教諭の移動時間は47秒~58秒(P45, P55)とされているが、P53のアにおいて、A教諭が羽菜と「別れた時間から」「発見するまでの所要時間は47秒から57秒(ママ)ほど」であり、「(所要時間に幅があることについては、再現のため多数の児童が自由遊泳中のプール内を縫うように移動しており、また大型フロートなどの障害物も異動経路上に存在したことなど不確定要素が複数存在したことから、移動の所要時間に10秒ほどの差が生じたものである。このように10秒ほどの差異が生じたことは上記の再現状況に照らせばむしろ自然なことであったと考えられる)」との記述がある。

しかし、この「不確定要素」は、A教諭の経路だけでなく、羽菜の経路にも当然に存在したものであり、だとすれば再現検証の羽菜の移動時間の幅が2秒しかない(不確定要素に影響されていない)ことは不自然である。現に、P.73には「再現検証の際,羽菜ちゃん役の女児が南側プールサイド付近から北側へ移動しようとしたところ,数人の児童の乗った大型フロートに接触する事象が発生した。このとき,羽菜ちゃん役の女児は南側から北側に移動するのに 1分以上の時間を要しており」との記載がある。とすれば、羽菜の移動時間についても、10秒以上(大人であるA教諭と1年生児童の体格差も配慮すべき)の差異が生じることが考えられる。

羽菜がA教諭に発見されていることを動かしようのない事実とすれば、羽菜の移動時間が約29秒~31秒(P47,P55)以上となると、A教諭の移動時間はさらに長くなり、委員会の認定とは異なる可能性が生じる。この羽菜の移動時間に幅が生じることを排除する合理的な理由はどのようなものなのか。上述のとおり、A教諭の証言を軸とすることが既に疑わしい。

また、平成24年8月17日の両親説明会(平成24年8月17日の両親説明会(平成25年7月27日文字起こし資料提出済み、音声データあり)において、羽菜のプール内での移動の仕方は、常に「ぴょんぴょん」(両親説明P.23)跳ねるような動きであったとのA教諭と教頭の証言があるが、再現検証時の羽菜役の女児の移動時間は、「泳ぐことなく歩きながら」(P.47)、しかも「少しゆっくり」(P.47)再現されたことによって計測されている。これは、羽菜の「運動能力や日常生活での行動、泳力を総合的に勘案したもの」(P.47)とのことであるが、前出の両親説明会においては、A教諭は羽菜のプールでの動きは「イルカみたい」(両親説明P.23)と述べ、B教諭は「(洗濯機で)羽菜ちゃんも一番早い人といっしょに飛び跳ねて通ってるのを確認してるんです」(両親説明P.50)と述べられており、再現検証の施行方法とは必ずしも符合しない。

以上から、羽菜の移動時間が29秒から31秒とする計測データには疑問が残る。したがって、発見までの時間が、意識喪失から16秒~27秒であったとの仮説は完全には成り立たない。

 

P64. 「3.総括」の「(2)」

・羽菜の移動経路について

 羽菜は「A教諭が他の3年生と鬼ごっこを始めた時点で、北側プールサイド付近に向かって南北方向へほぼ直線的に移動した」(p.55、④のエ)と考えられ、その根拠は、羽菜の「移動所要時間とA教諭の移動所要時間との関係、プール学習の中で南北方向を直線的に横断する指導を複数回にわたって経験していたこと、そして溺水して意識を失って浮いた状態で発見されたという状況」(p.55、④のエ)とされている。両者の移動所要時間については、上述の理由から移動経路確定の根拠とはなりにくく、直線的横断の指導については、確かにそれによって「単独で移動できると考えても不自然な点はない」(p.60)が、それがすなわち「直線的に移動した」ことを積極的に根拠づけることにはならない。「溺水して意識を失って浮いた状態で発見されたという状況」については、A教諭が溺水地点に、羽菜より後に到着したということの根拠ではあるが、羽菜が直線的な移動を行ったことの根拠とは言えない。

 

P64. 「3.総括」の「(3)」

・育成学級女児(民事裁判の推認にかかわる証言を行った女児。以下、女児Pとする。)と羽菜の動向について

  自由時間開始直後、女児Pと羽菜は一緒に遊んで(P.57)いたが、その後、羽菜は女児Pとは別行動に移り、「女児PはB教諭と遊ぶグループに参加」(P.58)したことが、2年生女子児童によって目撃されている。女児Pについては、A教諭の聴き取りでも、B教諭が遊んでいた育成学級児童の中に含まれていた(P.58)とされるが、一方で、A教諭は「洗濯機してるとき(報告書P.35:羽菜は女児Pと一緒とされている)とかは、(羽菜が)お友だちと一緒に二人でいはったん覚えてるんですけど、相手の子が誰かまではちょっとわからない」(両親説明P.23)と女児Pを認識しておらず、B教諭は「事故当日に当該女児を大型フロートに乗せるなどして遊んでいたとは確実には言えないと供述」(P.58)している。

したがって、2年女児が目撃したとおり、自由遊泳になり、直後は一緒に遊んでいた女児Pがやがて羽菜と別行動をとり、B教諭と遊ぶグループに参加していたしても、A教諭が羽菜と遊んでいたとき、またその後(羽菜の移動開始時)も同様に、別行動をとっていたかどうかは不明である。A教諭が、「投げてた(水につけていた)子一人一人の顔と名前がわかるわけではない」(両親説明P.27)と述べていることからも、「遊んでいる児童の中に、羽菜ちゃんと行動を共にしていた育成学級の女児の姿はなかった」(P.38)とする証言は確実とは言えない。

 

・溺水直前の女児Pとの再合流の可能性について

また、もしA教諭が羽菜と遊んだ時点で、女児Pと羽菜が別行動をとっていたとしても、B教諭の自身の行動についての証言が正しいとすれば、P.42に示される図のとおり、B教諭と行動を共にしていた女児Pは、A教諭と遊んでいた羽菜の位置に近づいている。したがって、羽菜の出発時間によっては、女児Pと羽菜は合流することが可能である。P.43の図によれば、上述の移動時間のズレが生じた場合には、羽菜の位置はさらにプール南側寄りになると考えられ、女児Pと再び合流する可能性を打ち消すことはできない。

裁判による推認と結論が異なっていることについては、上述の女児Pと羽菜が別行動をとっていたという内容が示されているのみで、明確な反証は示されていない。女児Pの証言に関する検討が、再現検証等によって為されているのであれば、それを示すことが必要であると思われる。

 

P65. 「3.総括」の「(4)、「(5)」

・羽菜が南側から北側へ単独で移動したことについて

(4)のとおり、確かにプールの構造及び羽菜の身長、体格から移動は可能であり、南側から北側プールサイド方向への移動についての心理的な障害は、普段ならなかったかもしれない。また、(5)のとおり、羽菜に溺水経験はなく、教員からは水位の高さ、その危険についての注意喚起もなかった。

しかし、移動が可能であり、教員からの注意喚起がなかったことで、「単独で行動したと考えても不自然、不合理な点はない。」とは言えても、それがすなわち、当日の水位の高さのリスクを認識していなかったこと、また「単独で移動した」ことを積極的に根拠づけることにはならない。(可能性を示すのみ)

  

P65. 「3.総括」の「(6)」

 ・事故発生時の他児同行の可能性について

P.65で示される発見時の状況は、「発見時、周囲には事故に気付いた児童は見あたらず、他の児童や教員から羽菜ちゃんの溺水を知らせる声や救助を求める声などをA教諭は聞いていなかった。」とされ、「ゆえに本件事故の発生時、羽菜ちゃんが南側プールサイドから北側へ直線的に移動した際、他の児童による同行、接触、その他の関与があったとは認められず」(p.65) と、「発見時」と「発生時」が混同されている。発見時と発生時には、委員会の認定では16秒~27秒の差があるとされているのであるから、発見時の状況と発生時の状況を同様のものととらえることはできない。

また、A教諭は発見時の状況について、「『まわりに他の児童はいなかった』と一貫して明確に述べ,(中略)供述の具体性,一貫性,そして供述態度の真摯さなどを考慮すれば,羽菜ちゃんの発見当時,羽菜ちゃんの溺水に気付いた児童は一人もいなかったと考えざるを得ない。」と委員会は認定しているが、実際にはA教諭は、平成24年8月17日の両親説明会では「(発見時に)4~5 人いたと思うんですよ、でも、みんなあっち向いてたりこっち向いてたりで、羽菜ちゃんに気づいてる子がいなかった。」「何人か子どもがいたのは見たんですけど、ビート板はそのときはなかった…そのすぐ近くにはなかった。私もぼーっと見る余裕はなかったので、ちょっと狭い…1mか2mくらい前やったかですけど、それ以上前は見えていない。」と述べており、また同日説明文書にも「浅田さんの周囲には,他の児童もいたが」(説明文書P.7)という記載があるなど供述は一貫していない。A教諭は「『まわりに他の児童はいなかった』と一貫して明確に述べ,『誰も気づかないのが不思議なくらいだった』などと発見時の心情についても率直に述べて」(p.63)いるとされているが、周囲に子どもがいないならば、誰も気づかないのは当然、不思議でもなんでもないのであって、この矛盾が認定されていることこそが不思議である。

また、このA教諭の供述を裏付けるものとして、「溺水した際、そこまで同行した児童がいたとすれば、まったく救助の必要性を認識しなかったとはにわかに考え難く」(P.62)「見かけたり、発見したりした場合に、何ら救助の手をさしのべず、教員の助けを呼ばないということは,にわかに考え難い」(P.63)との認定が示されているが、ここにはいくつもの矛盾がはらまれている。

まず、同行した児童がいたとしても、溺水に気付けるかどうかは不明である。実際に、A教諭ですら、一瞬「クラゲ泳ぎ?」(両親説明文書P.7)と思ったと述べており、「再現検証でも明らかになったように,自由遊泳の時間中,児童は非常に積極的かつ活発に活動し,行動領域も広範囲に及ぶ」(P.145)状況の中で、同行児童が他の遊びに夢中になり、短時間に生じた羽菜の溺水状況に気付かない可能性は大きい。

また、溺水に気付いた児童いたとして、「教員の助けを呼ばないということは,にわかに考え難」(P.63)くとも、「他の児童や教員から羽菜ちゃんの溺水を知らせる声や救助を求める声などをA教諭は聞いておらず」(P.63)ということについては、再現検証で測定された「自由遊泳時間中の騒音は極めて大きく,溺水に気付いた児童が教員を呼び,あるいは溺水の危険を感じた児童が教員を呼ぼうとしても,その声が教員その他監視者に届く可能性は極めて低いと考えざるを得ない。」(p.173)と、調査委員会自らが記述している上では当然である。

したがって、「発見時、周囲には事故に気付いた児童は見あたらず、他の児童や教員から羽菜ちゃんの溺水を知らせる声や救助を求める声などをA教諭は聞いていなかった。ゆえに本件事故の発生時、羽菜ちゃんが南側プールサイドから北側へ直線的に移動した際、他の児童による同行、接触、その他の関与があったとは認められず」とは言えない。

 

P.65 「4.合理的仮説の検証」部分について

P.66(1)「羽菜ちゃんがA教諭を追いかけた可能性について」

・A教諭の目視可能性について

 羽菜の移動開始は、「A教諭が3 年生児童と鬼ごっこを始めるのと同時か,それよりも少し早い時点であったと考えられ」(P.71)ているが、それは「A教諭がプール中央を移動中、羽菜ちゃんの姿を一度も目視しておらず、しかも両者が同一地点に到達した際の時間差が16秒から28秒ほどで、羽菜ちゃんが先に到達していたこと」(P.56)により根拠づけられている。

しかし、A教諭のこの「目視」の可能性に対しては、いくつもの疑問がある。

まず、P.150のカに示されるように、羽菜とA教諭は事故当日が初対面であり、それまでの接点はない。そのA教諭が、鬼ごっこという、複数児童を見ながら追いかけては捕まえ、複数児童を見ながら逃げるという行動の中で、遠いところでは5m以上離れたプールの中を(P.66図参照)動いていく初対面の児童を確認できるだろうか。しかも、みな同じような帽子をかぶり、せいぜい肩から上だけが見える児童をである。 

また、P.66の図をみれば、赤い直線状を歩く羽菜を、A教諭が目視できるのは、②から③へ至る直線の、赤いラインより上の部分と、③から④へ至る直線の、赤いラインより下の部分、および④から⑤へ至る直線のみである。A教諭の移動時間が47秒から57秒であるとすれば、この目視可能部分にA教諭がいる時間は、せいぜい各7秒以上10秒未満となる。しかも、鬼ごっこをしながら、「浮遊物上の児童によって,視界が部分的,一時的に遮蔽ないし制限される場面」や、「キックにより発生した飛沫,波紋等により水面下の対象物等については視認が困難となる場面があり,対象物等の形状,輪郭の認識が困難な状況となる場合」,「キックにより発生した飛沫,波紋,水流のほか,太陽光による水面の反射も加わり,A 教諭の視点から西から北の方向への視界が限定される場面」(P.68)があると、委員会自らが述べている状況の中では、いかに、「これによってプール中央付近の視界が完全に遮蔽されることはなかった」(P.67)としてもである。

委員会は、もし鬼ごっこの中で「その進路の前後に対して,児童との衝突を避けるため相応の注意を払っていたと考えられる」(P.68)ことを、追ってくる羽菜を視認できる根拠としているが、衝突を避けるために追従する児童に相応の注意を払っていたならば、むしろそれより距離のある対象物を視認することは困難になるであろうことは想像に難くない。

以上のことから、A教諭が羽菜を一度も見ていないとしても無理はなく、それによって根拠づけられている、羽菜の移動開始時間にも疑問の余地があると考えられる。

 

・「後追い」について

報告書で検討されている「後追い」は、A教諭の後ろを、同じ軌跡で動くことに限定されている。しかし、P.71の児童の証言や、両親が繰り返し伝えてきた「後追い」には、A教諭に視線を送りながら動くこと、その動線上で合流しようとすることも含まれる。その可能性について検討されることなく、「後追いをした可能性はほとんどない」(P.72)とは言い切れない。

しかも、委員会の言う追従型の「後追い」の可能性の否定も、P.70の⑥小括にまとめられているように、「羽菜の進路がA 教諭や他の児童、教員によって全く確認されていないこと」(ア)(イ)、「計測時間を基にした移動時間、移動経路による推察」(ウ)(エ)、「追従型の後追いによる再現実験」(オ)によって行われている。これらの根拠は、上述の理由により確実とは言えず、したがって追従型の「後追い」を否定する理由にもならない。

 

*以下の(3)(4)は、「溺水」を直接的かつ排他的に生じさせる事態について検討することが目的とされているようである。(例えば、大型フロートとの接触が重大な障害や疎外傷を生じさせ、それが溺水に直接つながるというような)。それが検討されることも必要ではあろうが、しかし、それをもって、「大型フロートなど浮遊物や他の児童との接触、加害行為その他外的な要因の影響を受けること」がなかったということはできない。私たちがこの調査に臨んだのは、そのような、事故直後から解剖結果によって明らかであったこと(溺水につながるような重大な障害や外傷、損傷がないこと)の再検討ではなく、また、可能性を排除して限定的なストーリーを組み立てることでもなく、確たる根拠を示しつつ、蓋然性の高い、妥当と思える推論を示していただくことである。

 

P.73(3)「浮遊物との接触の可能性について」

・大型フロートとの接触の可能性

大型フロートとの接触の可能性は、「接触していたとすれば、羽菜の移動時間は47秒~57秒(A教諭の移動時間)以上であったはず」(ア)(イ)、「羽菜の発見、救助時には周辺に大型フロートはなかったというA、B教諭の証言」(ウ)、「医学的検証(搬送先病院の所見)として溺水に至るような重大な障害はないこと、教員、児童によって目立った外傷(溺水に至る程度の重大な切創、裂創、刺創)は確認されなかった」(エ)(オ)、「「大型フロートの下敷きになったとすれば、大量の水を飲み、水底に沈むはずであるところ、搬送先病院の検査結果により、大量の水は飲んでおらず、羽菜は浮かんだ状態で発見、救助されている」(カ)(キ)という、4つの点から否定されている。

「接触していたとすれば、羽菜の移動時間は47秒~57秒(A教諭の移動時間)以上であったはず」(ア)(イ)という点については、上述のように、両者の移動時間の推測に疑問が残る以上、確たる根拠とは言えない。

「羽菜の発見、救助時には周辺に大型フロートはなかったというA、B教諭の証言」(ウ)は、「発見、救助時」と「溺水時」が異なる以上、根拠としては成り立たない。委員会の見解によれば、羽菜が溺水地点に到着してから、発見されるまでには、16秒~27秒の時間があるとされる。(ただし、上述のように、A教諭の証言のみを軸としているこの計測時間がさらに幅を生じる可能性はあると考えられる。)

P.163~P.169には、再現検証における30秒ごとのプールの様子が画像によって示されており、「プール水面には全体の面積に対しておおむね 15 ㎡~25 ㎡ほどの無人の空間が形成される場面が確認され,本件事故当時に羽菜ちゃんが浮いた状態で発見された地点も無人の空間となる場面が見られた。」「また,無人の空間は 30秒間以上にわたってそのままの状態が継続しており,この間,進入する児童の姿は観察されなかった。このような空間で単独の溺水事故が発生した場合,監視が十分行き届かない危険性を高めることになる。」(P.171)と、無人空間が30秒以上継続して現れる可能性を示唆している。しかし、羽菜の発見場所が当時、この無人空間となっていたかどうかについての確定は困難である。

むしろ、この画像からは、30秒の間に、大型フロートなどの浮遊物や、児童たちがいかに短時間にランダムに移動し、その場の状況が変化するかを読み取ることができる。したがって、発見時と溺水時の状況は異なっていると考えるのが合理的であると思われるが、この可能性はなぜ排除されているのか。

「医学的検証(搬送先病院の所見)として、溺水に至るような重大な障害はないこと、教員、児童によって目立った外傷(溺水に至る程度の重大な切創、裂創、刺創)は確認されなかった」(エ)(オ)という点については、再現検証の際に、羽菜役の女児が大型フロートに接触した(P.73)とされるが、そのことによって、女児はもちろん重大な障害も、目立つ外傷も負っていないと思われ、その確認もされていない。(この点について、7月20日報告会で質問を行ったところ、委員会からは「接触ではなく、避けて進んだだけである」という回答を得たので、それを明記していただきたい。)大型フロートやその他の浮遊物との接触自体が、そのまま重大な障害や目立つ外傷を引き起こすことにつながるわけではない。

また、「大型フロートの下敷きになったとすれば、大量の水を飲み、水底に沈むはずであるところ、搬送先病院の検査結果により、大量の水は飲んでおらず、羽菜は浮かんだ状態で発見、救助されている」(カ)(キ)という点についても、大型フロートやその他の浮遊物との接触自体が、そのまま大量の水を飲むこと、溺水して沈むことにつながるわけではない。

報告書では医学的な面からの結果として、羽菜の溺水原因は、「口内に水が入る状況が発生した。急に冷たい水隗が喉頭部に達したため、喉頭けいれんが起こって気道を閉塞した。」(P.211)と明記されている。(カ)(キ)では、大型フロートの下敷きになっていないことの根拠が、大量の水を飲んで沈んでいないこととされているが、原因が喉頭けいれんであるとすれば、大量の水を飲んで沈んでいないことは大型フロートと接触していないことの根拠付けとはならない。

実際に、大型フロートにぶつかった、その下敷きになったという児童の証言は多数聞かれており、普段のプールにおいても、再現検証についても、あるいは当日の事故についても、児童や保護者からの聴き取り、アンケート調査、を通じて調査委員会にもその声は届いているはずである。溺れかけて苦しかった、怖い思いをしたということはあるが、溺水に至らない接触、下敷きは頻繁に起こっており、「大型フロートなどの下敷きになったとすれば当然に生じうる客観的な状況(水底に沈んだ状態)」(P.75)が常に生じているわけではない。したがって、重大な障害や外傷、大量の水を飲み、沈むということがなくても、大型フロートとの接触やその関与がなかったとは言えない。(なんらかの調査結果が科学的に示されている?)

むしろ、羽菜の溺水の原因として、「体のバランスを崩す,顔に水がかかる,せき込む,あるいは頭部が水没するなど突発的,偶発的な事態に遭遇した際,不意に少量の水を飲み込んだことで一時的な窒息状態に陥り」(P.99他)ということが示されているのであれば、「体のバランスを崩す,顔に水がかかる,せき込む,あるいは頭部が水没するなど」の事態を引き起こすものとして、大型フロートとの接触による影響は当然考えられるべきではないか。

しかし、この結果が「まとめ」としてP.98~P.99につながり、「大型フロートなど浮遊物や他の児童との接触,加害行為その他外的な要因の影響を受けることなく,北側プールサイド付近センターラインやや東寄りの地点に到達した。」とされ、検討された重大な障害や外傷を引き起こす(とされる)大型フロートとの接触のみならず、浮遊物との接触の可能性がすべて否定され、羽菜の行動の説明とされていることには違和感が残る。

 

P.76(4)「第三者による加害の可能性について」

この可能性についても、医学的な見地から、身体枢要部について「溺水に至るような打撲,骨折,創傷等を伴う第三者による加害行為等の関与があったとは認められない。第三者が殴打等によって溺水させた可能性,大型フロートなど浮遊物を強くぶつけるなどして羽菜ちゃんを溺水させた可能性はいずれもないと断定できる。」(P.78)、また「体表には顕著な外傷等はなく,内臓や骨格などに関しても損傷はなかった」(P.79)として、それをもって溺水に至るような直接的な加害行為はなかったとしているが、それがすなわち、「他の児童を含む第三者の行為による影響は認められず,第三者の加害行為その他外的な要因によって本件溺水事故が発生した可能性はない。」とされること、また「まとめ」としてP.98~P.99につながり、「大型フロートなど浮遊物や他の児童との接触,加害行為その他外的な要因の影響を受けることなく,北側プールサイド付近センターラインやや東寄りの地点に到達した。」と、他の児童との接触までが否定されることには違和感がある。

「再現検証でも明らかになったように,自由遊泳の時間中,児童は非常に積極的かつ活発に活動し,行動領域も広範囲に及ぶとともに突発的な行動や不意を突く行動など予測困難な行動のほか,一部児童は危険な行動に出る場面も見られた。」(P.145)との記載も報告書にはあり、故意の接触や加害行為とは言えなくとも、他児童の関与により、「体のバランスを崩す,顔に水がかかる,せき込む,あるいは頭部が水没するなど」の事態が生じることも十分に考えられるからである。

 また、P.140「イ 溺水リスクとの関係について」において、「(ア) 羽菜ちゃんは人に関する興味が旺盛で,新しい物事に対する関心も強く,周囲と良好な人間関係を築いており,対人関係上のトラブルはなかった。むしろ周囲の児童や教員から声を掛けてもらったり,ときに助けてもらったりしながら学校生活に徐々に順応していた。いじめの被害,他学年の児童による嫌がらせなど,対人関係に起因する問題は全く存在せず,本件事故に対人関係上の問題が関係した可能性は皆無である。」との記述がある。この記述は羽菜の性格特徴を基に、本件事故の内容を検討したものであると思われるが、特に後半の二行について、普段の生活の中で対人関係に起因する問題、トラブルが全く存在しなかったとは言えず、またたとえそうであったとしても、それを以て、「本件事故」においても、「対人関係上の問題が関係した可能性は皆無」とは言えないのではないか。

7月20日の報告会において、委員会は「後追い」についての羽菜の性格特徴に基づく推論を述べた両親に対し、「性格証言は慎重に取り扱う必要がある」との回答をしている。上記の点については、性格証言を取り入れ、後追いについては取り入れないということについても、委員会の判断する根拠の信頼性を示していただきたい。

 

「第4 羽菜ちゃんが移動を開始した経緯(合理的に推認できる事実)」について

(2)鬼ごっこに触発されて移動を開始したことについて

P.100~P.101においては、羽菜が移動を開始した契機は、A教諭と3年児童とが始めた鬼ごっこであったという認定が記述されている。しかし、この認定には疑問が残る。

・移動開始時期

 P71.⑥のウ、羽菜が「南側テント前から移動を開始したのは、A教諭が3年生児童と鬼ごっこを始めたのと同時か、それよりも少し早い時点であったと考えられ」るならば、P102 で「羽菜ちゃんの目の前で楽しそうに鬼ごっこを始めたA教諭と数人の3年生児童の様子に」「興味、関心を惹かれ、これに触発された可能性が高い」とは言えないのではないか。

 

・羽菜の性格特徴

 羽菜は「集団での遊びに参加するのに躊躇する場面が学校生活や児童館(学童)での日常生活の中で見られた」(P.72)のは確かであろうが(ただし、鬼ごっこのルールについては理解していた。この点、両親に確認があったかどうかは疑問)、「人懐こく,他の児童に対する興味や好奇心も旺盛」(P.63)であり、両親が何度も証言したように、人に惹きつけられて動くところがあった。そのような羽菜が、A 教諭と 3 年生児童らが目の前で始めた「鬼ごっこ」(追いかけっこのような遊び)に興味関心を惹きつけられていながら、「プール内を駆けめぐる A 教諭と他の児童らの様子に強く触発され」(P.102)ていながら、それを契機として、「速やかに対岸に 1 人で向かった」ということには、大きな違和感を覚えざるを得ない。

 しかも、対岸に対する興味、関心が契機となったことについては、周囲の騒音や、視認範囲の限定により否定されており、わざわざ対岸を目指す理由はさらに不明になるように思われる。また、そのために音声的、目視的に興味・関心を引き付ける対象が鬼ごっこに限定されたとすれば、なぜそれに背を向けて、「鬼ごっこを始めた時点で(中略)移動を開始」(P.55)していたのかも疑問である。

7月20日の報告会においてこの点について質問したところ、「学童や学校では、一人で遊ぶこともあった。一人では動けないお子さんではないと聞いている」との回答をいただいたが、確かに一人で遊び、動くことはよくあり、しかしそれよりも人とかかわるのが好きだったということが、両親やともに育ち、育ててきた周囲の人々の羽菜に対する印象である。その証言よりも、学童や小学校で数か月、数時間を過ごした方々の証言を重視する根拠も不明であり、その点についても証言の評価については、きちんと基準を示していただきたい。

 

Ⅲ 四について(上述した女児Pについての部分を再度以下に示す)

1.P.313 民事裁判による推認と異なる結論について

・育成学級女児(民事裁判の推認にかかわる証言を行った女児。以下、女児Pとする。)と羽菜の動向について

  自由時間開始直後、女児Pと羽菜は一緒に遊んで(P.57)いたが、その後、羽菜は女児Pとは別行動に移り、「女児PはB教諭と遊ぶグループに参加」(P.58)したことが、2年生女子児童によって目撃されている。女児Pについては、A教諭の聴き取りでも、B教諭が遊んでいた育成学級児童の中に含まれていた(P.58)とされるが、一方で、A教諭は「洗濯機してるとき(報告書P.35:羽菜は女児Pと一緒とされている)とかは、(羽菜が)お友だちと一緒に二人でいはったん覚えてるんですけど、相手の子が誰かまではちょっとわからない」(両親説明P.23)と女児Pを認識しておらず、B教諭は「事故当日に当該女児を大型フロートに乗せるなどして遊んでいたとは確実には言えないと供述」(P.58)している。

したがって、2年女児が目撃したとおり、自由遊泳になり、直後は一緒に遊んでいた女児Pがやがて羽菜と別行動をとり、B教諭と遊ぶグループに参加していたしても、A教諭が羽菜と遊んでいたとき、またその後(羽菜の移動開始時)も同様に、別行動をとっていたかどうかは不明である。A教諭が、「投げてた(水につけていた)子一人一人の顔と名前がわかるわけではない」(両親説明P.27)と述べていることからも、「遊んでいる児童の中に、羽菜ちゃんと行動を共にしていた育成学級の女児の姿はなかった」(P.38)とする証言は確実とは言えない。

 

・溺水直前の女児Pとの再合流の可能性について

また、もしA教諭が羽菜と遊んだ時点で、女児Pと羽菜が別行動をとっていたとしても、B教諭の自身の行動についての証言が正しいとすれば、P.42に示される図のとおり、B教諭と行動を共にしていた女児Pは、A教諭と遊んでいた羽菜の位置に近づいている。したがって、羽菜の出発時間によっては、女児Pと羽菜は合流することが可能である。P.43の図によれば、上述の移動時間のズレが生じた場合には、羽菜の位置はさらにプール南側寄りになると考えられ、女児Pと再び合流する可能性を打ち消すことはできない。

裁判による推認と結論が異なっていることについては、上述の女児Pと羽菜が別行動をとっていたという内容が示されているのみで、明確な反証は示されていない。女児Pの証言に関する検討が、再現検証等によって為されているのであれば、それを示すことが必要であると思われる。

 

2.民事裁判における推認の否定について 

  ・女児Pの証言について

女児Pの証言(教頭説明):「後ろから、お名前はわからない、3年生の男の子がビート板に飛び乗ろうと、ポーンとこうしたときに、後ろからビート板が当たった。で、そのときに手を離したので、羽菜さんがどこにいかれたのかわからなかった。で、捜していたけれども見当たらなくて、で、水の中を見てみたら、潜ってみたら水の中にいはるのを見たと。で、名前の知らない 3 年の先生に言った。で、上にあげはった。」(平成24年8圧20日両親への説明記録 平成25年7月27日提出済み)

民事訴訟における推認の基礎となった上記女児Pの証言については、委員会は「羽菜ちゃんが A 教諭に声をかけ,一緒にプールの中で遊んだ時点で,羽菜ちゃんは既に育成学級の女児とは別行動に移り,単独で行動していたと認定することができる。」(P59 (2)事故直前の行動 ⑨)として、A教諭との遊び以前に、羽菜と女児Pが別行動をとっていたということを示したのみである。しかし、上述のように、羽菜が単独で行動していたということ、および女児Pと事故発生時まで別行動であったということについて、委員会の示す根拠は合理的とは言えないのではないか。

 

また、この女児Pの証言については、報告書第8章「事後対応」の中で、小学校が事故後に行った家庭訪問で、教師が聴き取った「ビート板の動きと羽菜ちゃんの溺水とを関連付ける証言」(P.261)として触れられているが、この部分における証言の扱いは、検討対象としてのものではない。「得られた証言が果たして事実なのか(無意識の)創作なのか,事故後の早い段階で市教委は事実解明の困難さに直面することになった」(P.298)という京都市教育委員会の事後対応の姿勢を説明するために用いられている。ここで示されるのは、京都市教育委員会がその証言の信ぴょう性を疑ったという認定のみであり、調査委員会自体のこの証言への評価は示されていない。

しかし、民事訴訟とは異なる結論を示す以上、この証言についても、報告書に示されている以上の検討が行われること、その結果を報告書に示すことが求められるのではないか。

 

 

以上