■8月22日自主検証のご報告と御礼

みなさま

遅くなりましたが、2015年8月22日、京都市立養徳小学校プールにおける自主検証が終了いたしましたことをご報告いたします。

 かなりの準備をして進めてきたものの、やはり計画通りには運ばず、スケジュールの変更を強いられたり、トラブルが生じたりはいたしましたが、多勢の安全監視員を擁して行い、事故なく無事に終了することができました。

 まずは大人数での再現にご参加いただいたお子さまと、参加にご同意くださったご両親に、また、検証チームに加わってともに動いてくださったみなさま、お手伝いにと駆けつけてくださったみなさまに、心からの感謝を申し上げます。

 さらには、直接お会いした折に、またメールや電話、書面を介して、力強いお励ましやあたたかいお言葉をいただくなど、心を寄せてくださった数多くのみなさまに、あらためてお礼を申し上げます。

 

 今回のプールでの検証は、私たちの自主検証の中でもことさら大きな意味をもつものです。当日と同じ人数の子どもさんに集まっていただきたいと募集をしてきましたが、最終的には予備日を含めて90名のお申し込みをいただき、22日に参加可能であった子どもさん69名にプールに入っていただくことができました。

 

 当日と同じ水深、大型フロート等のビート板も用いて環境を再現する検証でしたので、参加を決めることに躊躇を持たれた親御さんもおられたかと思います。その中で、この検証に対する私たちの思い、羽菜の声を聴いてやりたいという切なる願いと、この検証によって事故状況を精査し、その結果を真の意味での再発防止につなげていきたいという希望をご理解いただき、参加を決めてくださったことは非常にありがたいことでした。

 参加に当たって両親に寄せていただいたメッセージの中には、私どもからの参加協力のお願いについて親子で話し合い、羽菜を知るお子さん自身が参加を決めてくださったというようなお話も多く、たいへん感激いたしました。羽菜の声をともに聴こうとしてくださるお気持ちを、このような形で差し出していただいたのだと思っております。

 

 私たちの自主検証は、昨年7月に第三者委員会より事故調査の報告を受けて以来、両親が友人たちや支援してくださる研究者の方々の力を借りて進めてきたものです。事故後に入手した様々の資料やデータを突き合わせ、第三者委員会の報告書を参照しながら、可能な限り科学的に、客観的にということを目指しています。

 

 今回の検証では、羽菜(と近い体格の児童)と当日のプール担当であった三教諭、各学年の平均体格児童らの基本運動測定と、自由遊泳の再現測定を行い、細かい時間と動きを記録しました。それらの数字と記録データをコンピューターソフトで分析し、事故状況がどのようなものであったかを検討していきます。

 

 ご理解いただきたいことは、この検証に、私たちが求めている結果やストーリーがあるわけではないということです。私たちが聴きたいと願っている羽菜の声は、客観的な数字を集め、精査し、細やかな事実確認の積み重ねを行うことによってこそ浮かび上がるものですが、その声はおそらく、明確に事故の筋道を語るものではないでしょう。

 事故直後に徹底した聴き取りを幅広く行うことができていれば、もしかしたらその声をもう少しはっきりと聴くことができたのかもしれませんが、3年の月日を経て、子どもさんたちの記憶は薄れ、その機会は既に失われてしまいました。

 

 今回のプール検証は自主検証の重要部分ではありますが、その一部をなすものでしかありません。今回の検証結果を基に、数理的シミュレーションを用いて蓋然性の高い可能性を拾い出すとともに、当日にあった事柄を詳細に確認することも続けていきます。その上で、なんとか事故の核心に近づくことができれば、その結果はみなさまにもご報告の上、なんらかの形で公表して、学校における水泳事故の実効的な再発防止策を講じる材料として社会に返していきたいと思っています。

 随時、情報は歩む会のHPにアップしていきますので、今後もこの検証の行方に関心をもっていただければ幸いです。

 

 最後にあらためて、私たちに手を差し伸べてくださったみなさまにお礼を申し上げます。

 私たちが問い続ける問いは二つあります。「なぜ、私たちはあの子を失わなければならなかったのか、なぜあの子はいないのか」というwhyの問いと、「どのようにして事故は起きたのか、あの子はどうやって死んでしまったのか」というhowの問いです。

 whyの問いに答えはありません。私たちは一生悔い続けるでしょう。私たちがあの子を守ってやれなかった、生きさせてやれなかった。

しかしhowの問には答えがあります。事故が「どのようにして」おきたのかということはせめて知りたい、それによって羽菜の人生を最後まで守ってやりたいと願っています。

 

 みなさまがその答えを得ることに力を貸してくださっていることに、あらためて心からの感謝を申し上げるとともに、今後とも、なにとぞよろしくお見守りいただきますようお願いいたします。