●はなさき山(2013/4/7)

 四月に入り、桜が咲いて、やはり思い出すのは去年のこと、晴れがましく迎えた入学式のことです。羽菜は、よく似合っていたお気に入りのワンピースを着て、 親子三人で記念の写真を撮りました。式で一番に名前を呼ばれて、親の方がドギマギしたこと、張り切ってランドセルを背負ったのに、なかなか一人で登れな かった歩道橋のこと。昨日のことのようです。 

  この三月で、一年生の担任をしてくださった先生が定年を迎えられました。今回は、お許しを得て、先生からいただいたメールの内容をご紹介したいと思います。


  先生は、教員生活最後の授業で、絵本「はなさき山」を読み、最後に羽菜の話をしてくださったそうです。「いよいよ二年生だね。羽菜ちゃんのことずっと忘れな いでいようね」と。「『私も子どもたちも羽菜ちゃんを絶  対に忘れない』ということをお伝えしたくて…。」と言っていただきました。あるお友だちは日記に、「はなちゃんにあいたいから毎朝 早起きしてはなちゃんの旗をあげています こいのぼりみたいでおかしいけど わたしははなちゃんにあいたいからです」と書いてくれたそうです。


  みんなとうまくやっていけるのかと勝手に心配していた親をよそに、羽菜は羽菜なりに、たくさんのつながりを作っていたのだなと思います。何人ものお母さんから、子どもさんが今も、おうちで羽菜の話をしてくれているとお聞きしています。小学校でも植樹の話があると聞いたお友だちが、「はなちゃんの樹があった ら、ずっとお世話したい!」と言ってくれたことも、保育園に植えてもらった樹を、お母さんとわざわざ見に行ってくれたお友だちがいたことも聞きました。そ れも、担任の先生が羽菜のことを大切に思い、クラスでそれを伝え続けてきてくれたからでしょう。


 普段の授業でも「今羽菜ちゃんがここにいたら喜ばはったやろね。」「みんなやさしい一年生になったね。先生嬉しいわ。でも羽菜ちゃんがここにいてくれたら先生どんだけ嬉しいか。羽菜ちゃんといっしょに いたかったわ」と話していてくださったそうです。離任式の挨拶でも、羽菜を想ってくださりながら、「最後の授業は《はなさき山》でしたね。これからもいっ ぱい みんなの《はな》 を咲かせてください。」とおっしゃったとのこと。
 小学校での羽菜の姿を思い出すと、新しい環境で、わからないこともたくさんあった中、羽菜なりに健気に一生懸命、がんばっていたのだと胸を衝かれます。大きすぎるランドセル、ちょっとおねえちゃんぽかったスカート姿。守ってやれていたら。


 羽菜の半年にも満たない小学校生活、かかわっていただいたみなさまに、心からお礼を申し上げます。たくさんの花が咲きますように。
先生、ありがとうございました。

浅田羽菜 両親