第2回回答文書(2014年7月26日)

2014年7月26日

浅 田 康 之 様

浅 田 恵美子 様

京都市立養徳小学校プール事故

第三者調査委員会

委員長 安 保 千 秋

ご連絡


平成26年7月26日付け質問状に対し,ご連絡をさせていただきます。

第1 ご連絡に先立って

1 平成成26年7月25日付けご連絡に記載させていただきましたとおり,当委員会は,規則に基づく報告を終了しており,質問状には,ご回答は差し控えさせていただいております。

本日,平成26年7月26日付け再質問状をいただきましたが,再質問状には,上記のとおり,ご回答を差し控えさせていただきます。


2 当委員会は,すでに報告は終了しておりますが,「第三者調査委員会としての職責を果たすよう」求められていますので,ご連絡をさせていただきます。

但し,再質問状には,「貴調査委員会の期日としては,まだ一日を残しております。最後まで,両親と京都市教育委員会により選任された,第三者調査委員会としての職責を果たしていただくことを,ここにあらためてお願いいたします。」と記載されておられます点について,当委員会の立場等を述べさせていただきます。


まず,当委員会は,浅田様及び支援者の方が設置を求め,京都市教育委員会との話し合いのもと設置が決まり,委員の選考も浅田様及び京都市教育委員会双方の合意でなされたものです。しかし,当委員会は,当初は,「京都市立養徳小学校プール事故第三者調査委員会設置要綱」に基づいて設置され,その後,「京都市執行機関の付属機関の設置等に関する条例」の規定に基づき,「京都市立養徳小学校プール事故第三者調査委員会の設置等に関する規則」によって設置された委員会であり,委員は,教育長から委嘱されています。当委員会は,「浅田様と京都市教育委員会により選任された」ものではありません。


次に,当委員会は,第三者調査委員会として職責を負っておりますが,当委員会が終了するまでの1年間にわたり,土日祝日を含め,委員のすべての時間を拘束するものではありません。当委員会は,すでに審議を終え,報告書を作成し,報告も終了しております。「調査委員会の期日として,まだ,一日を残している」と記載いただいておりますが,本日の朝,再質問状をいただいたことに対し,当委員会として対応することは,限界があります。当委員会としては,ご連絡をさせていただきますが,このような限界があることをおことわり申し上げます。


第2 ご連絡の内容


1 A教諭供述の信用性について


(1)はじめに

A教諭の供述の信用性について検討した結果の概略は以下の通りです。なお,A教諭の聴き取りについては当委員会としての調査を基本としており,複数回にわたり,直接の面接調査を実施しています。


(2)「鬼ごっこ」移動経路に関する供述の信用性

プール内の移動経路に関しては,現場で自分が折り返した地点を明確に指示することができ,しかも折り返し地点については,5mライン少し手前,そこまで(20mライン上まで)は行っていないなど,詳細かつ具体的に地点を指示することができました。


また,5mライン少し手前の折り返し地点を指示した理由も,これ以上先に行くと深いから(それ以上進まなかった)など合理的,説得的です。さらに,別の地点を指示した理由についても,追いかけてきた3年生児童に「わざと追いつかれようとして」(ラインを超えない箇所で折り返した)などと当時の状況に即した説明をしており,ここでも合理的かつ具体的な理由に基づいて各地点を指示することができました。各折り返し地点について,A教諭は5mラインと20mラインを自らの位置関係を把握する上での重要な基準点としており,各地点の指示内容には具体的な根拠があります。各折り返し地点について,各ラインを完全には越えていない,(20mライン)上に立ったことはない,などと具体的に供述しており,各地点も各ラインを基準点として客観的な根拠に基づき供述しています。よってA教諭が指示した各地点は単なる目測や当て推量ではなく,客観性のある具体的根拠に基づくものです。


なお,A教諭は羽菜ちゃんの発見直前,3年生児童から「追われる役」として移動していたと供述しています。実際,A教諭は,鬼ごっこの途中で児童に追いつかれ,「鬼役」から「追われる役」に交代しています。別に検討したとおり,追いかけてきた3年生児童にわざと追いつかれようとしたという点と矛盾はなく,むしろ極めて整合的です。


さらに,鬼ごっこ中に児童から追われる役だったことと,A教諭の未来位置(進路上)に羽菜ちゃんを発見したこととは極めて整合的で,自然かつ合理的な供述内容です。「追われる役だった」という供述内容と発見時の状況はよく整合しており,矛盾はありません。


鬼ごっこ中の移動経路に関するA教諭の聴き取りに際して,委員が観察したところでは,2,3往復などと供述する際に,A教諭は指で「W」の字を描きながら説明したことを直接確認しています。A教諭が移動経路を指で描く所作は,委員において何ら指示したものではなく,また,何らの示唆も与えない状況下でありました。指で「W」の字を描きながら説明する状況は,その後の聴き取りや再現検証においても複数回,確認されており,指示内容が「V」の字になるなど,何ら変遷がないことを委員が確認しています。指で描く所作はごく自然な動作であり,説明内容ともよく符合します。


なお,「追いかけたり追いかけられたり」を3~4回繰り返していると別の場面でA教諭が述べたとされる点は,「往復」の回数として説明したものではなく,同一の事実を観点が異なる表現で説明したものと考えられます。A教諭は①~⑤地点を東西方向に移動を繰り返しているが,羽菜ちゃん発見前の④地点までの移動を前提とすれば追いかけたり追いかけられたりを「3回」繰り返したという表現は正確であり,羽菜ちゃんを発見した⑤地点までの移動を含めれば「4回」という表現も正確です。


他方,往復の回数は往路と復路を含むものであるから,2往復(往路×2+復路×2)という説明と,追いかけたり追いかけられたりを4回繰り返したという説明には何ら矛盾,不整合はなく,同一の事実を別の観点から説明したに過ぎないというべきです。


(3)全般的な信用性

記憶の保持について,小学校の教諭にとって目の前で児童が溺水して浮いているという状況は極めて衝撃的,印象的な体験であり,記憶として保持する契機として極めて鮮烈である。極めて衝撃的,印象的な事態に直面したがゆえに,記憶として鮮烈に保持されていると考えられます。

極めて鮮烈で,衝撃的,印象的な体験に基づく記憶であるため,他の学校行事での出来事などと事故当日の記憶が混同することは考えにくく,実際に,事故当日の記憶とその他を明確に区別して供述しています。特に,児童の溺水に直面するという事態は極めて非日常的な事態であり,異常な事態そのものであるから,その事故当日の具体的な状況を他の機会の記憶と混合することはにわかに考えがたい。


A教諭は単に事故状況を目撃しただけでなく,直接的な実体験として羽菜ちゃんを抱き上げ,救護するなど,体感的な経験に基づき,事故当時の状況を生々しく記憶しています。単に見聞きしただけでなく,A教諭が自らの肌身を通じて感得した内容を含む供述であり,その場で実体験した者でなければできない供述を多数含みます。事故直前に羽菜ちゃんと水遊びをする際の具体的状況や,背中だけ出して浮いていたという溺水発見時の状況,「クラゲ泳ぎ」「まわりの児童が気づかないのが不思議」だったという率直な印象,真摯な供述態度,さらには羽菜ちゃんをプールサイドに引き上げる際の「重さ」など,その場にいて体験した当事者でなければ供述し得ない,きわめて迫真的,具体的な臨場感ある供述内容です。


供述内容自体は極めて本人にとって不利益な内容であり,重大な法的責任を負う危険性のある内容です。

それにもかかわらず,あえて自ら不利益な供述を具体的かつ詳細に,しかも一貫して述べており,第三者をかばうためあえて虚偽を述べる動機もないことを考え合わせれば,その供述内容の信用性は担保されています(人はうそをついて不利益な事実を認めないものであるから,不利益な事実の承認は経験則上信用性がある )。


羽菜ちゃんが浮いていたという状況は,医学的資料からも完全に裏付けることができ,供述の最も中核的,中心的な部分に関する客観的な根拠がある。また具体的で迫真的な内容を含みます。

事故当日の現場にいた教員とは意識的に情報交換しないようにしており,また勤務校も他の教員とは全く別の小学校に転勤となっており,現場にいた他の教員との情報交換や会話などの中で記憶が変容,上塗りされた危険性は低く,さらに,羽菜ちゃんの具体的な様子を供述する際には目を真っ赤に腫らして涙を流し,それでも耐えるような表情で説明する点は供述態度として真摯であり,記憶として曖昧な点が残る部分は「分からない」「覚えていない」と述べるなど,供述態度について特に忌避的,回避的な(供述をはぐらかしたり,受け流したりするような)ところはありません。


(4)まとめ

以上の通り,A教諭の供述はプール内の移動経路に関する点を含め,供述の信用性を否定すべき根拠はありません。


2 児童の供述の信用性について

当委員会は保護者及び児童に対し,聴き取りの具体的な内容は当委員会の調査のためだけに使用し,外部への公表は一切しないことを前提として調査を実施しています。児童の供述の信用性判断を示すことは供述内容の全部又は一部を開示することになり,前記の前提に反します。また,供述内容を遺族側に開示すれば,調査の目的を逸脱するのみならず,今後に設置される調査機関等による聴き取りへの協力が得られ難くなるなど,真実の発見,事実の解明にとって重大な影響を及ぼす危険がある。よって,信用性に関する判断は差し控えます。

女児Pと称される児童の供述内容についても全部又は一部の開示につながる判断を示すことはできません。


3 報告書と当委員会の見解について 取材メモに関する記者会見での言及は,調査資料の開示は資料の目的外使用に該当するおそれがあり,遺族その他利害関係者に調査資料を全面的に開示することが一般的に許容されることになれば,聴き取り調査や資料の提出に応じる用意のある関係者の協力を得にくくなるおそれがあることを説示したものと理解しております。

事実認定の正確性,報告書の信頼性などは,当委員会の委員が各自の専門的な知識,経験をもとに多角的かつ徹底的に調査することなどによって担保されるものであり,当委員会の職責として担うべき役割と認識しています。


浅田様からのご要望に対する当委員会の3通の書面のなかで,事前に,浅田様との意見の相違及び浅田様からのご要望に応えることができなかったことが少なからずあったことについては,報告書に書かせていただくことは記載をさせていただいておりました。


当委員会が開催した記者会見は,報告書の公表のために行ったものであり,当委員会が報告書の内容に基づいて報告・説明をしたものです。

当委員会は,浅田様及び教育委員会に対する報告日の前に報告書をお渡しし,また,報告日と公表日を異なる日にし,公表の際には,浅田様及び教育委員会が,報告書に対するご意見等を用意する日数をできるだけ確保できるよう務めました。浅田様は,当委員会の記者会見の前後に2回,記者会見を開催されたと聞いており,浅田様の報告書に対するご意見等は浅田様が開催された記者会見で述べられたと理解しています。


4 公表用報告書のホームページへの掲載について

当委員会は「市民に広く閲覧することが可能な方法で,書面により公表する」と定められており,その方法の一つとして,記者会見時に配布しました公表用報告書を教育委員会へのホームページ掲載をすることにしております。しかし,公表用報告書の教育委員会のホームページへの掲載に関しては,浅田様から待って欲しいとのご連絡があり,その後,ご回答をいただいておらず,ホームページ掲載の手続ができておりません。

当委員会は,公表用報告書はすでに確定をしておりますので,今後,公表用報告書は広く公表していく予定です。


但し,公表用報告書の教育委員会のホームページの掲載に関しては,浅田様からマスキングのご希望がございましたら,ご希望について検討させていただき,マスキングをすると判断をした場合は,浅田様からのご希望があった旨記載をしてマスキングをする方法をとり,ホームページに掲載をさせていただくことにいたします。


当委員会としては,判断し事務局に指示をする必要がありますので,本日,午後6時までにご希望をお申し出くださいますようお願いします。ご希望のお申し出がない場合は,公表用報告書をそのままホームページに掲載をさせていただきます。